Sol

今日もまた、自分という人間を商品に営業しなければならない。等身大の自分、ちょっと背伸びした自分、卑屈な自分。あの会社にはどの「自分」を描いて、送ったっけな。

学生という身分をスーツで隠した社会人もどきが、「立派な」ビルに駆け込んで、赤の他人に自分がいかに素晴らしいか話し、いかに相手を好きかを告白する。話し相手は赤の他人なのに、そこには自分がいる。話をどこに向けても自分が。話してるのは自分、聞いてるのも自分。自分のこと、自分でよくわかってるはずなのに、一番わからない。答えを探るように、おそるおそる述べると、向こうの自分が笑う。ひとつの真実も捉え方によって嘘になる。

何がしたくて、面接を受けているかなんて、わからない。どんな仕事がしたいなんてない。どんな経験も、どんな生き様も5文字程度の簡便な言葉で短縮されてどんな人間なのか評価される。手をくわえたままそれを否定することもできず、結局今日も自分の不甲斐無さにがっかりする。今日もダメだったな、なんて。嫌な部分しか見えてこない。

「今まで何かをやり遂げたことはなんですか?」

という簡単な質問に全く答えられなかった。20数年の人生に思いを巡らしても堂々と誇れる経歴がなくて、哀しかった。と同時に、情けなかった。やり遂げたことなんてない。誇れることなんてやってない。いつも結末はハッピーエンドじゃなかった。助け船を出されても、頭が真っ白になった自分には言葉で飾ることもできなかった。

終わってから、雑踏の中、歩き回った。気を紛らわすために遊んだり、行ったことのないところへ足を延ばしてみようと思って、ただ歩いた。そこはいつもと違う風景、自分で選択して違うものを見ようと歩いてきた。どんなに足が痛くても目に映る真新しい光景が楽しくて、わくわくしてた。

今までやってきたこと、これからしたいこと。結びつける必要はない。自分はここにいたい。もっと知らない世界を見たい。将来なんて、千変万化、降りかかってくることはいつも違う。固定された仕事はない。なのに何がしたいなんて、世間もろくに知らないのに、なんで言える?俺はここにいたい。自分の居場所を見つけるんだ。それはきっと、いつも新しい刺激を与えてくれる。いつも、異なる感動を、感じていたいんだ。そんな場所が見つかればいいな。どこまでも甘いや。