いきさつと内面メモ

6月30日。今日は日勤。早出と遅出とをつなぐ仕事、物販片付け、品だし、休憩交代などいろいろ忙しい。土日休日になると遅出早出が各一人ずつ増えるので日勤はない。忙しさによらず面倒な仕事だ。

9時に出勤してからトイレ休憩を回し日配品(弁当おにぎりなど)の2便の陳列を終え、飲料の補充、棚卸前にもかかわらず空気読まずに大量発注された物販をやっつけ、忙しい9時台をやっつける。いろいろ終えて10時を回り、今日も仕事開始と同時に乗ってきたわと思いつつお土産品賞味期限の点検が当番表になっていて今日は親レジの人の日。これが終わったらひき続き休憩に行ってもらう。その点検が終わって、30歳(いつも俺をいじってくる男。最近誕生日を迎えた)の彼が休憩で代わっている時間にそれはおこった。土産の納入業者*1が親レジ(奥なので普通は休憩・点検以外でレジを出ない)にいる俺のところへきて、「さっき、ご老人がパン*2を万引きしたんですが・・・」と言った。

まぁ言われたからには仕方ない。ほっとくわけにいかないし行くしかないのでレジを放置して行った。幸い業者が犯人の容姿を覚えていてくれたので容易に見つけられた。ばれているとは知らず、とぼとぼと歩く、60台を超えたおじいさん。声をかける時に、「もし勘違いだったら、逆上したらどうしよう、」という不安はあった。なるべく穏やかな風を装って声をかけた。このバイトを始めて1年と2か月、初めての経験だった。

俺「すみません、失礼ですが、今そのポケットに入っているものを確認しさせていただけますかね。」
その業者の人が後ろで見ててくれたので結構心強かった。
じ「・・・・な、何や……」
俺「あ、あの左手に持ってるものを見せてもらえますか。」
じ「なんや、わしが万引きしたっていうんか。」
俺「いや、あの左手に持ってはるものが何か知りたいだけなんで。」
じ「こ、これはパンや。」
俺「それ、会計されました?」
じ「いや、…しとらん。わかった。返すわ、…。」
俺「いやそういう問題じゃないんで。それでは済みませんよ、とりあえずこっちへ来てください。」
といってバックヤードへ誘導。すると同行を拒否されて何を思ったか*3逃げようとしたところ、すぐ捕まえ、しかもその後ろには業者がいてくれたのですぐに観念したようだった。
バックヤードに連れていき、とりあえず社員さん(女)に報告。そこからは社員さんが詰って、*4結局商品を返し、反省させて二度と来店しないように約束させ、解放した。

とまぁここまでが起こった事実。

捕まえたからといって良い気はしなかった。それからいろいろ考えを巡らせた。もしかしたら、常習犯だったかもしれない。けれど社員さんにも、俺の頭にもたぶん共通して思ったのはいつも大抵疑われる人に比べ、身なりがきれいなこと、さほど逆上しなかったこと。などから、もう来ないだろうと考えたんだと思う。かなり弱気だったし。もしかしたら最初の穏やかな対応がビビらせたんかもしれん。うちの店は気性の激しいおばちゃんがいっぱいいるのでたぶんその人らは「あんた盗ったやろ!」とか言ってたかもしれないけど、偶然にも最近ある社員さんが他店舗に異動になった理由が、客に濡れ衣を着せてしまったことが原因だったらしく、それがことのほかに緊張した原因かもしれない。でも、ほとんど無条件で解放してしまったのは、赦したわけではないが、その見ず知らずなおじいさんを「信用した」ことになる。罪を犯した人は一瞬でその信頼を失う。そのおじいさんにもう一度チャンスを与えた。

法的な罪も、自分や相手がやったらだめだと考えている禁忌を犯してしまうと信頼を失う。後者のほうが厄介で、自分が良かれと思ってやったことでも相手が傷ついてしまうことがある。相手からすれば自分は信用に足りない人で、その烙印が押されたとわかったら自分も自己を否定しかねない。相手によく思われたいとか好かれたいという願望は持ってるし、そのためにやったことがマイナスの効果を生むとその分気落ちしてしまう。もしかしたら相手が気分を害してるのを知らないまま生きてるかもしれない。そう考えたらいままで何人の信用を失ってきたんだろう。今まで出会った人の中で自分に信頼を置いてくれてる人なんているのかと不安になる。

*1:この件の功労者

*2:パンの陳列棚はレジからは非常に見えづらい。

*3:いくら最近老けてる老けてるって言われてるからっておじいちゃんに負ける程度に運動能力は低下してない

*4:この社員さんも滅多に万引きに遭遇したことがないらしく、対応に困っていた。