花火(宇治川)

幼いころによく連れて行ってもらった花火大会。今日は適当なノリで行ってきた。大きな鼓動とともに黒画用紙にペンキが流れた瞬間、タイムスリップしたような感覚。あの時も、工業団地のある川べりで、小さな体の心臓を揺るがした。あの時も、花火は特別なものだった。いま、それを思い出した。忘れていたんだ、この衝撃を。夏の夜空に仕組まれたリズムとともに火粉が舞う。体中に突き抜ける振動のせいで、蒸し暑い気温の中で戦慄が走って鳥肌が立った。いつしかいかなくなって、遠く実家の階段の窓から小さな花びらを見ながら目を輝かせた。次々と花火がなくなった。近くで見られなくなった。思えばあの時も花火がBGMだった。思い出の片隅の背景に、花火があった。その思い出をよみがえらせたのは花火だった。なんだか知らないけど涙が出そうな気分で、息をするのを忘れていた。あっという間の60分だった。ただただ突っ立ていた。呆然としてた。いつかまた、花火をまじえた大切な思い出を築けたらいいなと思った。